
この前テレビで相撲を見ていたらある新弟子さんが"本人の知らない間に親同士が決めていた"と話していましたが、私もまさにそう。同郷だった親方のお父さんとうちの父親が「秋夫を大工にするべ」って決めちゃった。中学を卒業したばかりの私が親方のもとへ行く日、母がかまどの陰に隠れて泣いていたのを昨日のことのように覚えています。
ところがもっと忘れられない出来事が、入門2日目に起こりました。その日は上棟式。親方に「○○持って来い」と言われて、何気なく2階の天井裏を通って渡そうとしたら天井を踏み抜いて下まで落ちてしまったのです。
田舎の天井はとても頑丈なので歩いても平気なのですが、その家の天井は竿縁天井と言って、茶室などに用いる繊細なものだったんです。田舎者の私はそんな天井があることすら知らなかった。私も痛い目をしましたが、一からやり直した親方はもっと大変だったと思います。
その頃からもう40年近く経って、人は仕事がきれいだって褒めてくれるけど、一ヶ所でじっと我慢して修業していれば誰だって形になるもんでね。仕上がりが野暮ったくなるのは修業が足りないだけだと思います。『継続は力なり』って、昔の人はよく言ったもんです。
いまの時代って、簡単にできることがいいと言われるでしょ。「誰にでも簡単にできます」って、よくコマーシャルとかでも言うじゃないですか。でも私は「本当にそうかな」と思うんですよ。簡単な仕事って、結局それだけのものなんじゃないですかね?
お客様はどうしたいのか、どうすることがお客様にとって本当にいいことなのか。よく考えて丁寧な仕事をすることが、回り道のように見えてじつは一番の早道だと思うんです。・・・なんてことを言うのもじつは私がせっかちで少々早とちりだから(笑)。親方にもよく叱られるんです。
でも考えてみれば、私が大工になるために修業をしていた時も、一足飛びに巧くなるってことは決してなかったですもんね。ひとつのことができるようになって初めて次のことができる。いくら時代が変わったって、仕事というのはそういうもんだよね。
安さん、鈴木さんと私、水戸工務店のおじさんトリオですが、若い大工たちとも仲良くやっていますよ。話?いやー話は合わないですねえ(笑)でも気が合ってりゃいいんですよ、気が。


高校生の頃、宮大工に関する本を読んで、大工という職業にとても感動したんです。そして自分も手刻みの仕事をしてみたい、大工になりたい、そう思って仕事先を探しました。でも、最近はなかなか手刻みの仕事をさせてくれる会社は少なくて。工場で事前にカットまで終わらせて現場で大工は組み立てるだけ・・・確かに効率はいいかもしれないけれど、自分の望む大工ではなかったから、妥協はできませんでした。
水戸工務店でお世話になる前にも、5年ほど手刻みで家を作る会社にいました。比べることではないかもしれないけれど、「隅梁工法」など独自の技術を入ったばかりの自分にも隠すことなく教えてくれる、そんな水戸工務店の懐の広さに“凄さ”を感じています。
実は夏に結婚を控えていて、近々一家の大黒柱になる身です(笑)。大工としても家庭人としても、早く頼りがいのある人間になりたいと思っています。そしていつか家族のための自分で家を作れたら・・・それこそ大工冥利に尽きますね。
小さい頃から大工さんになりたくて仕方がありませんでした。工業高校で建築を学び、叔父がここの親方(社長)と知り合いだったので、そのつてを頼って「入れてください」とお願いしました。2回断られたけれど、3度目でやっと親方の許しが出て、水戸工務店に入れた時は飛び上がりたいくらい嬉しかったです。
最近は家を建てるといっても、工場ですでにカットされた材木を組み立てるだけというところが多いのですが、水戸工務店では大工の技術を絶やさないために、私たち若手に刻みからやらせてくれます。丸太を買ってきて、皮を剥ぐところから経験させてくれたこともありました。
私はこういう環境で学びながら仕事ができることを、とても有難く思っています。自分も早く全てを任されるようになって、人の模範とされるような大工になりたいです。
親方は私にとっては家庭を離れ社会に出て出会った、もう一人のお父さん。人生を教えてくれる、かけがえのない人です。本当に会えて良かった。これからもたくさんのことを教わって、いい大工になれるよう頑張りたいです。


小学生の頃から図工の時間が大好きでした。家にも興味があり、広告をみては「いいなあ」とあこがれている、ちょっと変わった子どもだったんです。
進路を決める時になって、「大工になりたい」と言ったら、両親が女性でも技術を身につけられるところを一生懸命調べてくれました。それで母が『大工育成塾』を見つけてくれたんです。両親とも一度決めたら突っ走る私の性格をよく知っているので、下手に引き止めるよりも応援してやる方がいいと最初から思っていたみたい…(笑)
『大工育成塾』の第一期生は女性を採用しませんでしたが、二期生から入塾が認められました。そして塾生を受け入れていた水戸工務店に来ることができたんです。
ここに来られたのは本当にラッキー。本格的な仕事が学べることもあるけれど、何より人間関係がとてもいいんです。すごく厳しいけれど、あったかさとやさしさがあるのがわかるし、叱られても後を引くことがない。まるで家にいるみたいに居心地がいいです。
目標は早く仕事の流れを身につけて、自然に動けるようになること。先生として教えてくれた安さんたちに、早く恩返しがしたいです。